研究概要 |
本研究の目的は、分岐条件を付けたガロアの逆問題を考察し、その応用として「代数体kの最大不分岐p拡大のガロア群T(p)の構造解析」を行うことである。平成22年度の実施計画に記した計画の主たるものは、「不分岐G拡大の存在に関する研究」「アーベル体の類体塔の構造に関する研究」であった。 不分岐G拡大に関しては、得られた「任意のp群Gに対して、有理数体上の初等アーベルp拡大kとその不分岐拡大K/kで、ガロア群G(K/k)がGと同型となるものが存在する」という結果がOsaka J.Math.vol.47 (2010)に掲載された。また,関連する問題として,p群Gをガロア群に持つような有理数体上のガロア拡大で,分岐する素数の個数がGのランクと一致するものが存在するかという問題がある。代表者は,以前にGの位数が243以下の3群に対しては,この問題の答えは肯定的であることを示した。近年,KisilevskyとSonn (Compositio Math.2010)が,ある種の族に対しても肯定的であることを示している。代表者は,Kisilevsky-Sonnの手法の拡張を試みたが現時点では新しい結果は得られていない。 また、アーベル体の類体塔に関しては,類体塔が第一段階で止まるための条件を考察した。Lemmermeyerの類数関係式(Math.Nachr.2005)を利用すれば良いということは判明したが,具体的な考察は今後の課題である。
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