研究概要 |
本研究はガロア環上の差集合、符号の新しい構成原理を得ることを目的としている. 平成19年から20年にかけて、標数2^t, t:偶数、偶数拡大のガロア環上に差集合が存在し、この差集合は標数2^<t+2>で同拡大次数のガロア環の差集合の素イデアル部分に埋め込まれているという結果を得た.この差集合はパラメータとして新しいものではないが、有限体から始まるガロア環の列の上に埋め込まれながら拡大していく差集合の列を構成した点が新しい.2008年にイタリアで開催されたCombinatorics 2008で本結果を発表し、また、茨城大で開催された離散数学とその応用研究集会2008に招待されて発表を行った. この結果を証明するにあたり、ガロア環に新しい演算を導入し、その演算の下で定義された指標に付随するガウス和の値を決定した.この値が重要な役割を果たしている. 残された標数2^t, t:偶数、奇数拡大の場合について計算機実験を開始した.21年度中におよび標数2^t, t:奇数、偶数拡大の場合も含めて解決し、2進拡大体での組合せ数学の理論構築の手がかりを得たい. この新しい理論と手法は、差集合だけでなく組合せ数学の他の分野にも応用できると思われる.そこで、符号理論への応用を探るために、まず標数2^2のガロア環のReed-Muller符号を取り上げて計算機実験を行った.いくつかの場合について有限体のReed-Muller符号は標数2^2のガロア環のReed-Muller符号に埋め込まれているという結果を得た.21年度には、この証明と一般の標数のガロア環のReed-Muller符号の定義と埋め込み構造の解明を行いたい.
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