研究概要 |
1.Rankin-Selberg L-関数の零点とHecke固有値とを結びつける明示公式を報告した.これは保型L-関数の零点とHecke固有値とを関連付ける公式である。証明にはSturmによるC∞-級保型形式の射影とZagierのアイデアを用い,Eisenstein級数の増大度の確認,合流型超幾何関数の解析接続とLaplace-Mellin変換を実行している.主結果はHilbertとPolyaの作業仮設(1915年頃)にも符合するものである.特に下記のような新たな知見が得られたことに意義がある. (1).L-関数の零点と自己共役作用素を結びつける明示公式が得られたこと. (2).L-関数のReimann予想と同値な命題がHecke固有値を用いて表示できたこと. (3).保型L-関数の特殊値(周期)には大きい重さの尖点形式が現れることが志村によって証明されている.しかし我々の零点に関する主結果は小さい重さの尖点形式のFourier係数を用いて記述される.このような新しい現象を見出したこと. 2.実解析的Eisenstein級数の漸近展開式から上半平面の虚軸変数を分離したconvexity boundを得た.目標はsub-convexity boundの証明であるが,虚軸の変数を分離した凸性評価を証明できたことは研究の正当性を支持するものである.また,評価式の虚軸変数に関する制限も解消されつつあり,スペクトル理論などへの応用が期待される.
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