研究概要 |
本研究は、(イ)概均質ベクトル空間のゼータ関数をアイゼンシュタイン級数の正則化された周期として実現する、(ロ)概均質ベクトル空間のゼータ関数を保型形式から得られるゼータ関数として解釈する、(ハ)クリフォード代数の表現から得られる4次形式の系列について分類を行い概均質ベクトル空間論の枠に収まらない関数等式の理論を構成する、という3つの課題を掲げている。21年度は、特に、(ハ)の課題において進展があった。具体的には、(A)問題とする4次形式を不変にするリー環の因子として予想されている二次写像の不変リー環の構造の決定、(B)この4次形式に対し大域的ゼータ関数を構成するための理論的枠組みとして、概均質ベクトル空間上の保型超関数の概念を導入し、対応するL関数の関数等式の理論を整備したこと(田村敬太との共同研究)、(C)この保型超関数のL関数の理論を古典的なガウス和の相反法則と組み合わせることにより、非退化双対二次写像のゼータ関数を構成したこと、という3つの成果を上げることができた。(A)の結果は、クリフォード代数の表現から得られる4次形式の群論的分類の重要なステップである。(B),(C)の結果は、特殊化することにより、4次形式に付随する非概均質的なゼータ関数の構成に利用できるほか、ある種の概均質ベクトル空間のゼータ関数に自然に保型形式を対応させる枠組みを与えており、課題(ロ)の進展に大きく寄与すると考えられる。
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