研究概要 |
本研究は、(イ)概均質ベクトル空間のゼータ関数をアイゼンシュタイン級数の正則化された周期として実現する、(ロ)概均質ベクトル空間のゼータ関数を保型形式から得られるゼータ関数として解釈する、(ハ)クリフォード代数の表現から得られる4次形式の系列について分類を行い概均質ベクトル空間論の枠に収まらない関数等式の理論を構成する、という3つの課題を掲げている。22年度は特に(ロ)、(ハ)について進展があった。(ロ)連携研究者広中由美子(早稲田大学)によって、U(n,n)/(U(n)×U(n))の球関数とhermitian Siegel seriesの関係が明らかになってきていたが、その結果を利用して(U(m)×GL(n,C),M(m,n,C))という概均質ベクトル空間のゼータ関数をユニタリ群のアイゼンシュタイン級数のKoecher-Maass型ゼータ関数として理解することができた。また、可換放物型概均質ベクトル空間の保型超関数と退化主系列表現の数論部分群不変ベクトルとの関係を見出した。これにより、実解析的な保型形式のKoecher-Maass型ゼータ関数の理論をかなり一般的に構成できる可能性が開けた(研究協力者田村敬太(立教大学)との共同研究)。(ハ)問題とする4次形式を不変にするリー環の構造についての予想を解決することができた。その結果を用いて、数少ない低次元の場合を除いてこの4次形式は概均質ベクトル空間の相対不変式とならないことを示し、さらに概均質ベクトル空間の相対不変式となる例外的な場合の完全な分類を実行した(連携研究者小木曽岳義(城西大学)との共同研究)。
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