研究概要 |
$p$進体上定義された連結reductive代数群$G$の極小放物型部分群$P$が開軌道をもつような弱球等質空間$X$を考え,この上の球関数を考察し,この空間の解析をする.このような設定における一般論の構築と,具体的な空間$X$に特化してより詳細な考察を行うことの双方に興味がある.数論的応用をもたらしうる空間として,この研究課題では特に以下のような空間について考察した. $p$進体$k$上の不分岐非退化エルミート形式$T$を表現する空間$X-T$を(対称空間である)$U(2n)/U(n)\times U(n)$と同型な空間として実現し,$X_T$上の球関数を考察する.$T,.S$が$k$上同値であれば,$X_T$と$X_S$は$k$上同型で,それぞれに対する球関数も簡単な関係で結ばれる.これにより,各$T$について$X_T$の特別な点における球関数の明示式から,固定した$T$についての$X_T$上の球関数のほとんどの点での明示式が分かる.従って,例えば$X_T$上のSchwartz関数の空間からの球Fourier変換像は決定できる. また,エルミートSiegel特異級数$b_\pi(T,t)$($t\in{\Bbb C}$)は,行列環の局所ゼータ関数と$X_T$上の球関数の特殊値で書き表される.従って,$X_T$上の球関数の性質から,こちらの関数論的な性質や関数等式が具体的に分かる. $S0(n)$あるいは$0(n)$の等質空間上の球関数とSiegel特異級数については以前,佐藤文広氏との共同研究で考察した.この場合は,球関数についての結果は,Siegel特異級数についての考察に不十分であったが,今回の場合には,球関数を十分に解析することができて,それから特異級数の性質を導くことが出来た.
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