デュールスマによって1999年に定義された、線型符号のゼータ関数拡張に関する研究を行なっている。具体的には、自己双対でない線型符号も考察対象とできるように、ゼータ関数の定義を新しく拡張した。それは、符号が自己双対であれば本来のデュールスマの定義と一致するので、デュールスマの理論を完全に含む拡張である。この結果、任意の線型符号に対して拡張したゼータ関数を定義することができるようになった。本研究では、ゴレイ符号(2個)に関して、拡張されたゼータ関数はリーマン予想を満たすことが証明できた。さらに、この方法を適用することで、リーマン予想を満たす不変式1つから、さらに新しいリーマン予想を満たす不変式が複数個構成できることもわかった。そして、それらのゼータ多項式は、重根をもつ新しいタイプのものである。また、デデキントゼータ関数のリーマン予想(一般リーマン予想)が関連する剰余位数の分布問題においても本年度は進展があり、「2変数版」の剰余位数分布問題に関して、分類する法が4の場合に、目的の集合の自然密度が存在することが証明でき、またある場合には、その密度の具体的な値を記述することもできるようになった。さらに、今後、誤り訂正符号と数論的関数およびゼータ関数との関連についてさらに詳しく研究するため、ある種の数論的関数(q-加法的関数)についての基礎研究も開始した。これにより、符号理論と解析数論が本格的に結びつくことが期待される。
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