概均質ベクトル空間のゼータ関数のうち、2元3次形式の空間に付随するゼータ関数について、佐藤-新谷の扱ったSL2(Z)不変Z格子とは異なるZ格子について、一般論に基づくディリクレ級数を定義した場合、それらの間に成立する“現在の一般論では把握できていない"関数関係式を導いた。この研究は、以前より取り組んできた谷口隆氏(愛媛大学・10月より神戸大学に移動)・若槻聡氏(金沢大学)との共同研究の延長であり、10組定義できる不変格子のうち残っていた4組について、存在しえないと思われていた関数関係式を導出したものである。今回の4格子についての共同研究は、谷口隆氏との2者で行った。この結果により、10組20個のディリクレ級数のすべてに対して“一般論では把握できていない"関数関係式が構成され、一般論ではベクトル値であり自己双対型ではないゼータ関数の関数等式を、ベクトル値ではなく自己双対型の関数等式に書き換えられることが解明された。 多重ゼータ値について、Wadim Zudilin氏(ステクロフ数学研究所・マックスプランク研究所)との共同研究で得られた予想の2-1関係式について証明可能範囲を広げた。また、それによって示唆される重みつき和公式について、拡張を行った。Eulerが最初に定義した形である、等号付き多重ゼータ値のq類似に対しては、Wadim Zudilin氏および、奥田順一氏(クロストラスト)との共同研究を行い、巡回和公式のq類似について新しい視点を与えた。 両研究内容について、津田塾大学・熊本大学・名古屋大学等で開催された研究集会において講演を行い、Zudilin氏との結果等について論文を掲載した。
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