概均質ベクトル空間の一つである2元3次形式の空間において、整数環上の特殊線型群の作用で不変なZ格子のすべてを考え、それに付随するディリクレ級数の満たす関数関係式の構造解明に取り組んだ。ここで言う関数関係式とは、従来の概均質ベクトル空間のゼータ関数に関する一般論から導かれる関数等式のことではなく、変数を反転させずに記述される関数関係式のことである。関数関係式の背景にある類数関係式の成立根拠が十分に解明されておらず、判別式が正と負の類の間にある種のスパイラル構造が隠れていることが想定されるため、その解明に向けて作用する群を合同部分群に制限した場合と、係数を素数を法として見た場合について具体的な考察を行った。この結果、特に合同部分群作用下での類数の挙動を系統的に捕捉する関数の性質解明の必要性が判明しこれに取り組んだ。また、多重ゼータ値環のHoffman氏による基底予想のMZSV版について研究を深め、Zagier氏によて得られたMZV版の関係式との関連性を追求し、それぞれの張る空間の構造の関係についてある種の予想を得た。オーストラリアのニューカッスル大学を訪問してZudilin氏と以前からのMZSV予想関係式について議論を深め、q類似について一定の結果を得た。同地ではBorwein氏との共同研究もおこなった。佐々木氏とはArakawa-Kaneko zeta関数の類似として得られるL関数から定義した多重Euler数の諸性質について研究を行い成果を学会等で講演した。また青木氏・若林氏と行っていた一般化超幾何関数を母関数とするMZSV和についての論文がManuscripta Math.に掲載された。
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