研究概要 |
東海大学の渡辺純三氏, 北海道工業大学の和地輝仁氏と完全交叉のレフシェッツ性問題とジェネリックイニシャルイデアルに関する研究を行った. とくに, 渡辺氏の協力の下で, ゴレンスタイン環のレフシェッツ性問題に取り組み, 一定の成果を得ることができた. また, 和地氏の協力の下で, k階レフシェッツ性なる概念を導入し, 4つの単項式から生成される完全交叉のジェネリックイニシャルイデアル決定問題への応用を図ることができた. 主要な結果は以下の通りである. 1. 19世紀後半に書かれた, Paul GordanとMax NoetherによるHessianに関する論文[Mathematische Annalen 10]を現代的立場から解釈することが, SLPの解明に密接に関連していることが次第に明らかになってきた. すくなくともゴレンスタイン環のSLPの第一条件に関して, それに対応する斉次多項式のHessianが恒等的に消えるか否かに関わる渡辺氏の結果は, 完全交叉のレフシェッツ性問題への解決の糸口になるであろう. 2. 多項式環をイデアルで割って得られるアルティン次数環がk-SLPあるいはk-WLPという性質を持つ場合に, そのイデアルのジェネリックイニシャルイデアルの決定や, 次数付きベッチ数の上限の決定を行った. とくに, 4つの単項式から生成される完全交叉の(逆辞書式順序による)ジェネリックイニシャルイデアルは, 同じヒルベルト関数をもつrev-lexイデアルであることを証明した. これは論文Generic initial ideals of some monomial complete intersections in four Variablesの主結果である.
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