研究概要 |
「ホップガロア拡大」は、可換代数の立場から「群スキームのtorsorの非可換化」、非可換代数の立場から「強次数つき環の一般化」として説明できる。ホップガロア理論の応用として、量子包絡環のコサイクル変形による構成法を考案した。アイデアは極めて単純であって、知りたいホップ代数を、適当な分かりやすいホップ代数のコサイクル変形として捉えて(それは2つのホップ代数の上の、正規底をもつ bitorsor を構成することに他ならない)、そこから知りたい情報を引き出そうというもの。これを、量子包絡環を重要な例として含む一連のホップ代数に対し実践し、応用として、三角分割や (一般化された) 量子ダブル構成が、複雑な関係式を確かめることなく導けること、リー代数のコホモロジーに関する Whitehead Lemma の量子版が成り立つことなどを証明し、2つの論文"Abelian and non-abelian second cohomologies of quantized enveloping algebras"(J. Algebra 320(2008),1-47),"Construction of quantized enveloping algebras by cocycle deformation"(The Arabian Journal for Science and Engineering 33-2C(2008), 387-406) として発表した。これらの結果に基づく連続講義を南京大学で行った (2009年2月) 。またホップガロアの別の応用として、永田の定理「正標数の体上、連結簡約アフィン群スキームはアーベルである」を非可換(座標環)に一般化した形で証明し、論文 "Semisimplicity criteria for irreducible Hopf algebras in positive characteristic"(Proc. Amer. Math. Soc. 137(2009), 1952-1932) として発表した。別に、ホップガロアの立場によるピカール\ヴェシオ理論の解説論文"Hopf algebraic approach to Picard-Vessiottheory"(天野勝利氏らとの共著) を含む Handbook of Algebra 第6巻(Elsevier)が出版間近。
|