研究概要 |
「ホップガロア拡大」は、可換代数の立場から「群スキームのtorsorの非可換化」、非可換代数の立場から「強次数つき環の一般化」として説明できる。ホップガロア理論の応用として、量子包絡環のコサイクル変形による構成法を考案した。アイデアは極めて単純であって、知りたいホップ代数を、適当な分かりやすいホップ代数のコサイクル変形として捉えて(それは2つのホップ代数の上の、正規底をもつbitorsorを構成することに他ならない)、そこから知りたい情報を引き出そうというもの。このアイデアに基づき、(1)q-ボゾン(柏原)代数の一般化とその可積分加群に関する研究および(2)一般化量子ダブルとして表される点状ホップ代数(量子包絡環を含む)の研究を行い、研究成果を"Generalized q-boson algebras and their integrable modules"(J.Algebra 322(2009) 2199-2219), "On minimal quasitriangular pointed Hopf algebras"(J.Math.Sci.Univ.Tokyo,印刷中)として発表した。これらの結果に基づく講演をアルゼンチン・コルドバの国際会議で行った(2009年9月)。またホップガロアの別の応用として、永田の定理「正標数の体上、連結簡約アフィン群スキームはアーベルである」を非可換(座標環)に一般化した形で証明し、論文"Semisimplicity criteria for irreducible Hopf algebras in positive characteristic"(Proc.Amer.Math.Soc.137(2009), 1952-1932)として発表した。別に、ホップガロアの立場によるピカール・ヴェシオ理論の解説論文"Hopf algebraic approach to Picard-Vessiot theory"(天野勝利氏らとの共著)を含むHandbook of Algebra第6巻(Elsevier)が出版された。また、2009年6~7月、フンボルト財団研究員としてミュンヘン大学に研究滞在した。
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