研究概要 |
一般微分ガロア理論を創設することは19世紀以来の懸案であった.我々の一般微分ガロア理論の研究は1980年代にさかのぼる。論文は1996年に出版された.その後我々の仕事に触発されて2001年にはフランスのMalgrange教授が別の理論を提唱した.我々の理論とMalgrange教授の理論は同値であることがしばらくして示された. これらの研究で考察されたのは,標数Oの微分体のの拡大のガロア理論である.幾何学的に述べれば,標数Oの体上で定義された代数多様体の上で、微分方程式によりの記述される力学系のガロア理論である.そこに述べられたアイディアはより広く応用できる.即ち次の場合が考えられる。 1 標数Oの体上定義され代数多様体の上に差分方程式によって記述される離散力学系のガロア理論. 2 標数正の体上定義された代数多様体の上に微分方程式によって記述される力学系のガロア理論. 3 標数正の体上定義された代数多様体の上に差分方程式によって記述される離散力学系のガロア理論. この内1,2について進展があった. 1の進展について.標数Oの差分体の拡大について,一般的なガロア理論,一般差分ガロア理論を完成した. この理論は線形差分方程式に関する古典理論であるPicard-Vessiot理論を拡張するものであり,もっとも一般的な差分ガロア理論である. この理論の重要な応用として,複素数体上定義された代数曲線上の力学系で,ガロア群が有限次元になるものを決定した.これはまたガロア群が可解になる曲線上の離散力学系の分類をも与えている.このテーマについて論文On_a general difference Galos theory I, IIを書いた.IIは専門誌に投稿済みであり,Iも間もなく投稿の予定である.この仕事は大学院生森川修司氏との共同研究である. 2については,私の指導のもとバルセロナ大学の学生であるF. eiderich氏が博士論文を準備中である.克服すべき困難な点を私のアイディアで解決し,完成を待つばかりである.(3)については今後の発展を待たねばならないが,(2)がうまく行っているので,もはや時間の問題であると思われる.
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