研究概要 |
本年度は,(1)同型でない全射自己正則写像を持つ正規射影的代数曲面の分類と(2)楕円ファイバー空間やトーラスファイバー空間の具体的構成を目標としていたが,(2)はほとんど手が付けられなかった.(1)については一定の成果が得られ,近々論文(150ページ程度)を書き上げる予定である.また本年度は,この自己正則写像の研究について,以前書いたプレプリントの大幅な改訂を行った. (1)の成果を簡単に述べる.正規射影的代数曲面に対し,それが有理曲面で無いとき,または標準因子が擬正なとき,その曲面が同型でない全射自己正則写像を持つための必要十分条件を,ある5つの幾何学的条件のどれかを満たすという形式で記述することに成功した.たとえば,射影直線と曲線の直積を有限次被覆空間に持つ(ただしこの被覆写像は有限集合の外側で不分岐)という条件もその一つである.この分類結果は以前研究した非特異な射影的代数曲面の場合の拡張に当たるが,最小特異点解消に自己正則写像が一般には延長できないので,以前の結果そのものの応用では得られない.その意味で,この分類が出来たことは非常に意味があると思う.ただし,有理曲面の残された場合の分類には,本質的に全く新しい議論が必要と思われ,現段階ではこれ以上の結果を得ることはできない. 以前書いた自己正則写像に関するプレプリントの改訂では,本質的な議論がわかりやすくなるように,記述の仕方を改めただけでなく,いくつかの新しい成果も付け加えた.それらは今後のこの方面の研究に影響を与えるものと思われる.
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