研究概要 |
本年度は,同型でない全射自己正則写像を持つ正規射影的代数曲面の分類についての論文を完成させる予定だったが,数理解析研究所に長期滞在中だったヨンナム・リー氏(西江大学)との共同研究が始まり,予定通りに進まなかった.したがって上記代数曲面の分類について特に新しい進展はなかった リー氏との共同研究は部分的に本研究と重なり,種数ゼロで単連結な正標数一般型曲面の「Qゴレンスタイン変形」による構成についてである.なお標数ゼロの場合も含めてもこの種の曲面の例はあまり知られていない.我々は標数ゼロの場合のリー氏パーク氏の方法に習い,特異点をもつ特殊な正規楕円有理曲面を具体的に構成し,それがQゴレンスタイン変形によってスムージング出来るための条件を満たすことを示し,その結果目的の一般型曲面が得られる,という方針で行った.この共同研究は半分ぐらいが変形理論についてであり,本研究の具体的構成とは関係のないものだが,残りの半分は特殊な正規楕円有理曲面の具体的構成についてであり,その内のいくつかは本研究の一部とみなせる.具体的には,標数ゼロの場合にリー氏とパーク氏によって開発された構成方法の精密化,その証明の簡略化,および正標数への一般化がそれに相当する.また変形理論についても,対数的デルペッツォ曲面についての以前の研究成果の一部にあった,トーリック曲面を用いた具体的変形の構成が一般化され,それが利用されている.この共同研究の成果は今年3月にプレプリントにまとめられた.したがって,当初予定していた研究対象のリストにはないものの,本研究にふさわしいテーマについて成果を出せたことになる
|