本年度は正標数を含む代数多様体に関し次の5点について研究を行った。 (1)病理的現象の根源的原因である単純特異点の等特異軌跡について、すでに得られている分類を変形理論による記述を行うため、対応する関手を定義しようと試みたがその完全な定義はまだ得られていない。しかしながら関連すると考えられる等特異軌跡を含むTjurina数一定軌跡に関して決定を行った。対応して、正標数の標準特異点に関して、余次元2の点を除き分類を与えた。 (2)正標数楕円K3曲面でpべきトーションを持つものに関しての分類をより詳細に考察し、そのモジュライ空間の具体的記述を与えた。また、形式的Brauer群の高さを楕円曲面の生成ファイバーの群構造から与える具体的な公式の導出を行った。 (3)持ち上げ不可能なCalabi-Yau多様体について、第3Betti数が0ではないものの存在について研究を行ったがまだ具体的成果は得られていない。 (4)上述(2)を参照。導来圏理論の正標数への拡張についてはまだ得られていない。 (5)これまで得られているArtin-Schreier拡大塔を利用した巨大有限体構成法の応用として、周期の非常に長い新しい疑似乱数生成法を開発しテストを行った。従来知られている革新的方法であるMersenne-Twisterよりも長い周期の疑似乱数生成が可能であり、TestU01でのテスト結果が良好であることから実用化が期待される。
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