研究課題
本研究の最終年度として本年度は、研究実施計画の4つの項目に関して研究を行った。以下各項目ごとに成果を述べる。A.研究目的(1)にある正標数特異点理論の整備の中心的課題の一つとして、正標数代数多様体への野性的群作用による商多様体及びそこに現れる特異点に関して研究を行った。桂、塩田等による超特異楕円曲線の積への対合作用による商としての曲面およびその上の特異点に関する詳細な解析をより一般化した研究として、有限体上定義されたある種のArtin-Schreier型の曲線の自己積を考え、そこへの位数が有限体の位数と同じ野性的群作用を考え、その結果得られる商代数多様体とその上の特異点に関して詳細な解析を行った。これは作用する群が必ずしも巡回群ではない場合も含み、さらに任意標数での記述も可能とした良い結果である。商多様体の特異点解消として得られた代数曲面は一般型曲面で、種々の不変量を与えることができ、さらに特異点に関する種々の不変量、基本サイクル等基本的な性質がよくわかった。これらの結果はS.Schroeerとの共著論文として発表済みである。今後より一般の野性的群作用問題への発展が期待できる。一方、連携研究者廣門、齋藤との共同研究により、正標数特異点の病理現象として有理二重点を一般化した単純特異点について、その等特異軌跡を完全決定し普遍変形空間内での構造を究明し、3次元標準特異点に関する応用を得た。B.本研究目的(2)の正標数楕円曲面の数論的及び幾何学的研究と(4)K3曲面の研究に関連して、C.Liedtkeとの共同研究で得られた標数pでのp^nトーションセクションを持つ楕円K3曲面の研究に関しても従来の研究をまとめた共著論文に続き、それらのモジェライ空間のより詳細な究明を行った。C.正標数の病理現象と非Kaehler多様体との類似に関する研究の端緒を付けるという目的に関して、Mumford、上野等による観察以上のものは得られていない。D.目的(5)にある代数多様体の応用代数学への応用に関しては、Artin-Schreier拡大塔の構造を利用した、巨大有限体の具体的構成に成功し、その応用として新しい疑似乱数生成法であるASTを考案することに成功した。このASTは既存の疑似乱数生成法の中で現在最も優れているとされるMersenne Twistorをも凌駕する可能性を持つ生成法である。特に、疑似乱数生成法の評価方法として標準的であるTest-U01を非常に良い成績でクリアしており、今後の均等分布性に関する究明とアルゴリズムの高速化による改良により実用化への道も残っている。これらの結果は、梶原、北臺、宋等との共著論文として発表済みである。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
SUT Journal of Mathematics
巻: 47 ページ: 73-90
JP Journal of Algebra, Number Theory and Applications
巻: 22 ページ: 115-125