研究概要 |
Xを複素数体上定義されたn次元非特異射影多様体,K_xをXの標準因子,LをX上の豊富な因子,iを1以上n-1以下の整数とする.このとき偏極多様体の不変量である第i断面幾何種数g_i(X,L)と第i△-種数△_i(X,L)の応用の一つとして随伴束K_x+(n-i)Lが自明となるような(X,L)の特徴付けについて考えた。i=1のときは藤田隆夫によりK_x+(n-1)Lが自明であるための必要十分条件は△(X,L)=1かつg(X,L)=1であることが示されている.(ここで△(X,L)は(X,L)の△-種数,g(X,L)は(X,L)の断面種数である.)そこで△_1(X,L)=△(X,L),g_1(X,L)=g(X,L)となることをふまえ,iが2以上のときK_x+(n-i)Lが自明となる(X,L)がどのように特徴づけられるかについて考え,次の(1),(2),(3)が同値であると予想した(以下でL^nはLの次数をあらわす): (1)K_x+(n-i)Lは自明である. (2)△_i(X,L)=1かつ2g1(X,L)-2=(i-1)L^n. (3)g_i(X,L)=1かつ2g1(X,L)-2=(i-1)L^n. この予想について次の(a),(b),(c)の場合は正しいことがわかった. (a)i〓dimB_s|L|+2のとき(ただしBs|L|は完備線型系|L|の基点集合をあらわす). (b)i=2のとき. (c)i=3かつn〓5のとき. 今後は上記予想が一般に正しいかについて考察し,さらにこれらの判定法を用いてK_x+(n-i)Lが自明となる(X,L)のもつ構造を調べることが目標となる.
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