研究概要 |
Xを複素数体上定義されたn次元非特異射影多様体,KをXの標準因子,LをX上の因子とする.本年度の研究実施計画の下,以下のことについて研究を行ったので報告する. 1.n=4かつLが豊富な因子で,さらに随伴東K+Lがnefとなるときに,m(K+L)が大域切断を持つような正整数mを調べ,mが3以上の任意の整数の時には,m(K+L)が大域切断を持つことがわかった.さらにXがある種の特異点を持つ場合についても調べることで,K+Lの飯高次元が非負であるときに,mが6以上の任意の偶数に対してm(K+L)が大域切断を持つこともわかった.今現在の予想ではK+LがnefのときはK+Lそのものが大域切断をもつであろうと考えられている.そこで平成23年度もさらに小さい正整数mに対してこの考察を継続する. 2.1の研究のうち,K+Lがnefとなるときに,m(K+L)が大域切断を持つような正整数mを調べる方法はn=5の場合についても適用できることがわかった. 3.Xが2次元,Lがnefかつbigであり,さらにLの大域切断のなす次元が1以上であるとき準偏極曲面(X,L)の断面種数g(X,L)はXの不正則数q(X)以上であることが以前に証明されていた.さらにLの大域切断のなす次元が2以上であるときは,g(X,L)=q(X)となる(X,L)の分類がすでになされている.今回,LがnefかつbigでありかつLの大域切断のなす次元が1であるという条件のもとg(X,L)=q(X)となる(X,L)を分類することに成功した.
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