研究概要 |
この研究の目的は,代数幾何学にあらわれる様々な特異点の族を正標数の可換環論を用いて解析すると共に,それらの特異点の可換環論的性質を研究することである. 本年度では,代数幾何学で定義されるlc threshold (log canonical thresold)の正標数での一般化であるF-thresholdの研究,特にF-thresholdと重複度の間の不等式を主として研究した.この研究に関してはKansas大学でHuneke教授,高木俊輔準教授と討論を行い,今までCohen-Macaulyが必要だった,次数付きの場合の結果をCohen-Macaulayを仮定しない場合にも示すことができた.また,F-thresholdsと重複度の間の不等式の簡単な言い換えや,懸案であったF-thresholdの存在のための条件もより弱い形で言い換えられた. また,研究分担者の吉田は代数幾何学の乗数イデアルの正標数での対応物である一般化されたテストイデアルの概念を,素イデアルのsymbolic powerに応用した. 渡辺は重み付き超曲面の研究も行い,Arnoldの14個の例外型特異点のような2次元の次数付き超曲面特異点の分類方法を次数付き環の理論を用いて系統的に行う方法を開発し,これらの特異点の型の有限性を示した.現在その3次元の場合に挑戦中である.これらの結果をフランスLuminyでの可換環論の国際集会で発表した. 単項式で生成されるイデアルのcoefficient idealに関しても顕著な結果が得られた.
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