研究概要 |
1 モーデル・ヴェイユ格子がE_6 型の有理楕円曲面の乗法的卓越族の構成を日本学士院紀要(2012)に公表したのに引き続き、本年度は申請者と A. Kumar (MIT) の共著論文 “Multiplicative excellent families of elliptic surfaces of type E_7 and E_8” において、 E_7, E_8 型の場合に拡張して、これらの型の乗法的卓越族の構成に成功した。この結果は数学雑誌 Algebra and Number Theory に受理された.これらの E_r (r=6,7,8) 型の乗法的卓越族に関する結果を、以前に構成した有理楕円曲面の加法的卓越族に比較して言えば、以下の通りである.モーデル・ヴェイユ群の分解体は、r 個の変数によって基礎体上生成される純粋超越拡大体であって、ワイル群 W(E_r) をガロア群とする、族の定義体のガロア拡大である点は共通しているが、族の定義方程式たるワイヤシュトラス方程式の係数が、加法的な設定ではワイル群 W(E_r) の基本不変式となるのに対し、乗法的な設定では、変数のローラン多項式環内の基本不変式(例外 E_r 型リー群の基本指標)と等価になっていることで、重要な結果である. 2 当研究の初年度に考察した楕円K3曲面を正標数pでみると、適当な条件のもとに、ランクが20(K3としては最大)のものが現れる。これらのK3曲面はアルティン不変量が1に等しい超特異的なK3になるので、オーガスの定理によりpをきめると互いに同型である。しかしランクが20の楕円曲面としての同型類の個数はpとともにいくらでも大きくなることを論文 “Elliptic fibrations of maximal rank on a supersingular K3 surface” で証明した.
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