研究概要 |
連結複素多様体Mにたいして,単位円板Dからの正則写像の鎖を用いて小林擬距離が定義される.小林擬距離が距離になるとき,Mは双曲的であるという.さらに小林擬距離が完備になるとき,Mは完備双曲的であるという. 微分可能多様体M上の(1,1)-テンソルJはJ:TM→TMとしてJ^2=-id_<TM>を満たすとき,概複素構造と呼ばれ,(M,J)を概複素多様体という.複素多様体は自然に概複素多様体を定める.二つの概複素多様体間の微分可能写像f:M→Nは,その微分df:TM→TNが概複素構造と可換,即ちJ_Ndf=dfJ_Mが成り立つとき正則写像と呼ばれる. 連結概複素多様体において,複素多様体の場合と同様にDからの正則写像の鎖を用いて小林擬距離を定義する事が出来る。次の予想が小林昭七先生によって提起された. 予想概複素多様体は局所完備双曲性を持つ.すなわち,概複素多様体の各点は,その上の小林擬距離が完備な距離となる近傍を持つ. R.Debalme and S.Ivashkovichは複素次元が2以下の場合に予想を解決していたが,一般次元の場合にも予想が成り立つ事を解析的手法により以前示した.小林は,複素多様体の場合には微分幾何学的手法が有効であることから,概複素多様体の場合もそうである事を予想し,Ehresmann-Libermannの標準接続の重要性を指摘していた.実際,標準接続を用いて小林の予想を証明出来る事を確かめた.
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