研究概要 |
一般にm以下の自然数を項にもつ有限数列Iに対応して,m成分ストリング絡み目のミルナー不変量μ(I)が定義される。数列Iの長さがkのとき,μ(I)を長さkのミルナー不変量と呼ぶ.昨年度までは,Iの中に現れる数字の重複度に注目して,主に研究を進めてきたが,ある程度の結果を得たので,視点を変えて,数列の長さに注目して研究を行った.長さkのミルナー不変量は,ストリング絡み目の位数k-1の有限型不変量であることが知られていて,特にCk同値やコボルダントと呼ばれる同値関係の不変量になる.そこで,これらを組み合わせた新しい同値関係として,Ckコボルダントを定義して,ミルナー不変量との関係を調べた.具体的には,次の予想をたてて研究を進めた. 予想:各成分が自明な2つのストリング絡み目がCkコボルダントである為の必要十分要件は,長さk以下のミルナー不変量が一致する事である. この予想に対し,kが6以下の場合は正しい事は,今年度発表の論文「Characterization of finite type string link invariants of degree<5, Math.Proc.Cambridge Phil.Soc.148,2010,439--472」で示している.また,最近発表されたConant, Schneiderman, Teichnerの共同研究を用いると,この予想がkが偶数のときにほぼ正しい事がわかった.
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