研究概要 |
本年度(20年度)においては,アフィン3次元空間の斎藤自由因子の構成とその幾何学的性質を研究することを重点的に実行した。またそれに引き続くテーマであるが,このような因子に特異点を持つ積分可能な接続,一意化微分方程式を構成する研究の準備的な作業も並行して行った。曲線のE6,E7,E8型特異点の1-パラメータ変形であるようなアフィン3次元空間の斎藤自由因子の分類は以前に研究代表者が確立させていたが,本年度においては,これらの自由因子の定義多項式のb-関数の計算を成し遂げた。この成果は論文にまとめ熊本大学の紀要に発表する予定である。(これは神戸大学の中山洋将研究員との共同研究である。)また付随する捩じれのない積分可能接続を構成することに関しても満足すべき成果を得た。この成果を得るために数式処理システムを援用した。そのため,この方面の専門家である神戸大学の野呂正行教授の協力を得て複雑な場合にも結果を得ることができた。さらにその結果ともとの自由因子の補空間の基本群との関係についての知見も得た。複素鏡映群の判別式は斎藤自由因子の例になるが,特にShepherd-Toddの番号ではNo.23,24,27である3種類の場合は他の分野とも関連する興味ある対象だが,これらの場合に捩じれのない積分可能接続と一意化微分方程式を構成する問題に大きな進展をさせることができた。これらの成果を2008年8月に開催されたモスクワのモスクワ独立大学でのワークショップ(Geometry and Analysis on Complex Varieties),2009年1月の東京大学での研究集会,2月の京都大学数理解析研究所での短期共同研究で発表した。
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