研究概要 |
昨年度(平成20年度)においては,アフィン3次元空間の斎藤自由因子の構成とその幾何学的性質に注目した研究をした。本年度(21年度)においては,この成果をもとに斎藤自由因子に特異点を持つ積分可能な接続,一意化微分方程式を構成する問題を扱い,また一意化微分方程式の解を求めることも試みて,いくつかの知見を得た。一つは,平面曲線のE6,E7,E8型特異点の1-パラメータ変形であるようなアフィン3次元空間の斎藤自由因子に特異点を持つ一意化微分方程式の分類問題についてほぼ解決させることができたことである。またこのような微分方程式系ともとの斎藤自由因子の補空間の基本群の関係についていくつかの知見を得た。二つは,正二面体群と関係するアフィン3次元空間の斎藤自由因子の場合に,超楕円積分で表示できる解を持つ一意化微分方程式を求めたことである。これは東大の斎藤恭司教授がかつて4次式の判別式の零点として定義される斎藤自由因子の場合に楕円積分によって解が構成できる一意化微分方程式を研究していたが,それの一般化になっている。三つは,複素鏡映群の判別式の零点集合として定義される斎藤自由因子に特異点を持つ一意化微分方程式の分類である。Shepherd-Toddの論文の番号ではNo.23,24.27である3種類の複素鏡映群の場合を扱った。この問題については琉球大学の加藤満生教授との共同研究であるが,これらの場合に分類問題を解決させることができた。これらの成果を,2009年9月のシドニーでのAustralia Japanese Workshop on real and complex singularities,同年10月のモスクワでのSino-Russia Symposium"Complex analysis and its applications",また表現論シンポジウム,東京大学,筑波大学,近畿大学,熊本大学などの研究集会やセミナーにおける講演で発表した。
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