研究概要 |
正定値計量を備えた多様体はリーマン多様体と呼ばれ,計量が不定値の場合は擬リーマン多様体と呼ばれる.特に,不定値内積をもつ実線型空間を擬ユークリッド空間という.擬リーマン幾何学における対称性と等質性に関わり次のような課題を追求し,成果を得た. 1.野水によるKilling generatorsの方法を用いることにより,擬リーマン多様体の場合にもSingerの無限小等質空間の理論が成り立つことを証明することができた.また,この理論を適用することにより,共形平坦等質ローレンツ多様体の分類問題を進展させることができた.まだ、分類が完成したわけではないが,リッチ作用素の型によって場合分けを行い,その多くの場合に等質ローレンツ多様体を決定することができた.以上の結果を整理し,論文を執筆中である。 2.擬ユークリッド空間の対称部分多様体の例の構成を動機として,次のような研究を研究室の院生とともに行った.擬直交群の岩沢分解におけるベキ零部分群による擬ユークリッド空間への標準的な作用について,その軌道の性質を調べた.全臍的平坦部分多様体,退化する計量をもつ部分多様体など興味深い例が現れた. 3.4次元擬ユークリッド空間内の光錐の空間的曲線から, 3次元双曲空間のホロ円曲面を構成する方法を導き,そのようにして得られた曲面の幾何学的性質,特に特異点の分類について結果を得た.これらの結果をまとめ,論文とし出版予定である.
|