研究概要 |
空間M上のホモトピー同値写像全体が作るモノイドの恒等写像連結成分をaut_1(M)と表す.本研究の20年度の目的は以下のとおりである:Gを連結リー群,Hをその部分群とするとき,Gの等質空間G/Hへの作用の随伴が与えるモノイド写像h:G→aut_1(G/H)が有理ホモトピー群上で単射を誘導するかという問題(可視化問題)を考察すること.具体的には与えられた等質空間に対してその可視化次元を決定する方法を与える. 目的を達成するため,Brown-Szczarbaによる写像空間の有理モデルを経由し研究代表者により既に構成されている評価写像のモデルを用いて,まず先のモノイド写像の有理モデルm(h)の構成を行い完成させた.結果として可視化問題に対する認識原理を確立した.それはGの等質空間G/Hへの作用の有理モデルが明らかになった場合,可視化次元をm(h)の性質で完全に記述出来ることを保障している.研究の後半では,Gの等質空間G/Hへの作用のモデルを一般的に考察し,そのいくつかの性質を明らかにした.これにより認識原理から比較的扱い易い可視化の基準を導き,さらにOniscikにより分類されている階数1の等質空間に対して,可視化問題をすべて解決した.有理モデルm(h)を用いて,Kedra-McDuffによる一般旗多様体に関する可視化定理とSasao, Yamaguchiによる射影空間Mに対するモノイドaut_1(M)とあるLie群との有理ホモトピー同値性定理の別証明を与えることに成功した.こうした結果はこの研究で得られた我々の有理モデルの有用性を示しているといえる.有理モデルm(h)はシンプレクティク多様体Mに対してaut_1(M)の分類空間のKedra-McDuff mu-類を有理ホモトピー論的に解析する術を与える.従ってそのモデルは21年度研究において重要な役割を果たすことが期待される.
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