研究概要 |
ケーラー多様体の実超曲面上には概接触構造がケーラー構造から誘導される。ケーラー多様体上にケーラー磁場を考え新たな構造に付随した力学系を導入できたのと同様に実超曲面上には佐々木磁場が導かれる。しかしこの磁場は一様な磁場ではないためにその軌道の構造は複雑である。そこで対象を複素射影空間と複素双曲空間におけるA型実超曲面とした。この実超曲面においては、測地線は実超曲面の等長写像の一径数族による軌道として表現されている(つまり等質曲線である)ことが知られていたが、佐々木磁場による軌道もすべて等質曲線になることがわかった。軌道の性質と超曲面の性質がより密接に関係していることを考察するために、軌道が曲線として測地線に次いで簡単な構造であると考えられる円になっているものを考えた。A型の中でも測地球面・ホロ球面・複素超曲面を芯とした管というA_1型実超曲面においては、1)それらの主曲率の最小絶対値よりも大きな磁力を持つ佐々木磁場に対して円になる軌道が合同性を除いてただ1つ存在する。2)同最小絶対値以下の磁力を持つ(複素双曲空間内の)A_1型実超曲面上の佐々木磁場に対しては円になる軌道は存在しない、ということを示すことができた。またA_1型以外のA型実超曲面(A_2型という)においては、主曲率の絶対値に対して佐々木磁場の磁力が十分大きければ、合同性を除いて2種類の円になる軌道が存在することもわかる。これらの状況から逆に、構造ベクトルと成す内積(構造捩率)が0,1,-1のいずれでもないベクトルを初期ベクトルとする円になる軌道が存在する実超曲面はA_1型実超曲面に限るという特徴付けを行うことができ、実超曲面の性質と佐々木磁場の軌道の性質との対応の1つを示すことができた。
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