本研究では、多様体の双曲空間の変形空間Dを、トポロジー的側面、数論的側面および幾何学的群論の側面から研究することを目的としている。 平成20年度の研究では、特に幾何学的群論の側面からの研究が進んだ。具体的には、次のような成果を得た。幾何学的に重要な離散群として組みひも群がある。組みひも群を一般化したものとしてアルティン群があり、アルティン群を考察するにはその部分集合のアルティン・モノイドを調べるのが鍵となることが多い。そこで、研究代表者・藤井は、連携研究者・齋藤と共同で、アルティン・モノイドに対する測地的オートマトン(ワード・アクセプター)を具体的に構成した。特にコンピューターを用いて、そのようなオートマトンを構成出来るコンピューター・プログラムを土岡や淵脇とともに開発した。さらに具体的に測地的オートマトンを構成することで、アルティン・モノイドの増大関数を求めることもできた。齋藤は、この計算をもとにさらに一般化された幾何学的対象についての増大関数を求めることに成功した。また、本来の目的であるアルティン群の増大関数についての計算例もコンピュータを用いて求めるための準備も進んだ。 研究分担者の上正明は、3次元球面多用体の福本一古田不変量とOzsvath-Szaboの不変量が一致することを証明した。
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