本研究では、多様体の双曲空間の変形空間Dを、トポロジー的側面、数論的側面および幾何学的群論の側面から研究することを目的としている。 平成21年度の研究では、平成20年度に引き続いて、上記3つの側面のうち特に幾何学的群論の側面からの研究を推し進めた。幾何学の研究上で重要な離散群について、その保型関数ともいうべき増大関数の研究を行った。 具体的には、研究代表者・藤井は組みひも群を一般化したアルティン群の増大関数を求める試みを行った。アルティン群の系列の中で二面体群があるが、それについてはMairesse-Matheusが測地的オートマトンを構成し、増大関数を求めている。そこで、藤井はMairesse-Matheusが用いた議論を一般のアルティン群まで拡張する試みを行った。特に4本の組みひも群の場合には、Mairesse-Matheusの議論がほぼ同じように展開できるという見通しを得た。具体的には4本組みひも群の元の代表元の標準的記述が2面体群の場合の自然な拡張となっている場合をつきとめた。また、Mairesse-Matheusの議論を拡張できない場合についても考察し、その場合の4本組みひも群の元の標準的記述を行った。そこで、組みひも群の増大関数をコンピューターを用いて求める準備が進んだと言える。
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