本研究では、多様体の上の双曲構造の変形空間を、トポロジー的側面、数論的側面および幾何学的群論の側面から研究することを目的としている。 平成22年度の研究では、平成21年度に引き続いて、上記3つの側面のうち特に幾何学的群論の側面からの研究を推し進めた。 具体的には主に次の2つの成果を得た。 (1) 幾何学の研究上で重要な離散群であるアルティン群G(ブレイド群の一般化)について、増大関数の研究において成果を得た。アルティン群の系列の中で2面体群タイプがあるが、その場合についてMairesse-Matheusが測地的な代表元の必要十分条件を記述して、増大関数の有理関数表示を得ている。そこで、研究代表者・藤井はアルティン群の一般の系列に関しても、Mairesse-Matheusの記述した必要条件が一般化されることを証明した。 (2) アルティン群Gの正規部分群であるピュア・アルティン群PGに関して、fundamental blockという概念を導入することで、PGの元のノーマル・フォームを記述できることを証明した。さらに、2面体群の系列の場合にはPGの測地的な代表元の必要十分条件の記述にも成功した。
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