平成20年度に予定していた3つの問題のうち、次の2つについて実質的な進展があった。 1.楕円体を含む、ある種のLiouville多様体の一般点の共役跡の特異点集合の様子および全体の形状に ついて調べる。さらにノンコンパクトなLiouville多様体のカットローカスについて調べる。 2.Hermite-Liouville多様体の理論を研究する。まず複素射影空間上に作られる大域例およびKaehler-Liouville多様体の大域的構造理論を参考にしつつ、コンパクトな場合の大域的構造を調べ、その結果を局所構造の分類結果と比較検討する。 まず1の問題について、3次元以上の楕円体及びある種のLiouville多様体において、その一般点の共役跡の特異点集合は3つの連結成分からなり、それらはカスピダル・エッジであることがわかった。より詳しく言うと、そのうちの一つはその近傍がカスプ曲線と球面の直積の形であり、多の2つはカスプ曲線と球体の直積の形になっている。後者の境界部分についてはなおさらなる研究が必要である。共役跡の、その他の部分については、余次元1の滑らかな、はめ込まれた部分多様体になっている。また、多様体がn次元とすると、多様体が定曲率球面に近い場合、第n-1共役跡まで、類似の状況であることが判った。また2の問題については、適当な非退化性の仮定の下で、Hermite-Liouville多様体の局所的な構造が完全に判った。結果としてKaehler-Liuville多様体の場合には現れない、新しい局所的な例が見つかった。さらに実のLiouville多様体を複素化する形で複素射影空間上に多くの大域的な例を構成した。さらにそれらがいつ可積分測地流を持つか、またいつKaehlerになるかについての判定条件を調べた。結果は連携研究者の五十嵐氏との共著の形でプレプリント"On Hermite-Liouville manifolds"にまとめた。
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