研究概要 |
本研究は可積分測地流を持つリーマン多様体に関わるいくつかの主要な問題について、これまでの研究成果を踏まえつつ、更なる進展を目指すものであった。本年度の計画は次の3つの問題をほぼ平行して研究することであった。 1.楕円体を含む、ある種のLiouville多様体の一般点の共役跡の特異点集合の様子および全体の形状についての研究を完成させ、論文にまとめる。さらにノンコンパクトなLiouville多様体のカットローカスについて調べる。 2.Hgmite-Liouville多様体の理論の研究を継続する。特に複素射影空間上に作られる大域例について1の分類を試みる。 3.Liouville曲面について,ラプラス作用素の固有値分布の構造に対する(特異)半古典近似の方法についての過去の研究(清原、リウヴィル曲面における半古典近似、数理研講究録No.1119(1999),35-47)を整理し、論文にまとめる。さらに高次元化についても考察する。 それらに対する研究成果は次の通りである。まず、2については日本数学会の欧文雑誌にまとめた結果が公表された。また関連する結果がアメリカ数学会の雑誌に公表された。内容は主にHermite-Liouville多様体の局所的な構造の決定と、複素射影空間上の大域的な例の構成である。3については、上記内容を整理し詳しくしたものをチェコ・プルノにおける研究集会で発表し、諭文としてその研究集会のプロシーディングスに投稿した(公表予定)。主要な結果はLiouvillo曲面において通常の半古典近似が無効になる領域において、ラブラシアンの固有値に対する新しい半古典近似値を与えたことである。また1については、高次元の場合のカットローカスに関する諭文がAsian Journal of Math.から公表された。さらに2次元のノンコンパクトの場合も含むものが、共役跡に関する結果も込めて、近々Manuscripta Math.から公表予定である。そこにおいて、楕円面の場合のような単純なカットローカスや共役跡が広範なLiouville曲面においても現れることを示した。高次元の共役跡については、特異集合の主要部分についてはその配置も含めて判ったものの、更なる研究が必要と思われる。
|