研究概要 |
平成21年度は,前年度に成果が得られた3次元ユニモジュラーリー群のグラスマン幾何的曲面論の整理を引き続き行うとともに,そこから得られた知見を基に,リーマン対称空間におけるグラスマン幾何的曲面論の枠組み構築のための構想を練ることを目標とした。そのため,研究計画では,研究分担者とともに本研究課題に関連する各種研究集会に参加して情報収集を図るとともに,研究へのコンピュータ活用の可能性を模索した。これらの研究活動を通して得られた主な成果は,以下のとおりである。 (1) 先ず,3次元ユニモジュラーリー群のグラスマン幾何的曲面論については,その平均曲率一定曲面の存在方程式に関して一部残されていた未解決部分の解析を経て,この曲面論における総合的なグラスマン幾何的考察が終了した。得られた成果については,既に公表された論文(井ノロ氏との共著論文,項目11[雑誌論文]に掲載)に引き続く「Grassmann geometry on the 3-dimensional unimodular Lie groups II」として公表準備中である。 (2) また,本研究課題へのコンピュータ活用の可能性については,特に,階数2のリーマン対称空間の全測地的部分多様体の分類問題へのコンピュータ活用に関連する文献の収集及び整理分析を行い,得られた知見については研究集会で招待講演を行った。(項目11[学会発表]の第1掲載事項) (3) また,本研究課題に密接に関連する平行部分多様体に関する研究代表者の知見を活用して,リーマン対称空間の典型例である複素射影空間の実超曲面に関する新しい知見を得た。(項目11[学会発表]第二掲載事項)得られた成果は前田氏との共著論文「Real hypersurfaces with φ-invariant shape operator in a complex projective space」として投稿準備中である。 (4) 最後に,リーマン対称空間のグラスマン幾何的曲面論の枠組み構築に関する考察については,上記(1),(2)を始めとする今年度の研究活動で得られた知見では不十分であり,さらに,より詳細なリー群の表現論的視点と一階偏微分方程式論的視点の導入が必要不可欠であるとの感触を得ている。平成22年度では,リーマン対称空間のグラスマン幾何的曲面論の構築を完成させるため,これらの観点から本格的な考察を行い,本研究課題の解決を次年度目標として掲げる予定である。
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