研究概要 |
向き付けられたコンパクト曲面上の写像類群について,位相幾何学的な観点からの研究を行い,以下の成果を得た. 1.大きな位数の周期的写像の一意性:種数gが十分大きい閉曲面上の位数が4g以上の周期的写像が,互いに共役なものや他方のべきになっているものを同一視すると,位数によって一意に定まることがKulkarniによって示されている.高知工科大学の笠原泰氏との共同研究により,位数が8g/3よりも大きい周期的写像について同様の一意性が成り立つことを示した. 2.3次元球面に埋め込まれた境界付コンパクト曲面の正則ホモトピックな変形と写像類群の関係:境界付コンパクト曲面の3次元球面への埋め込みの正則ホモトピーによる変形がひき起こすねじりのなす群について,東京学芸大学の安原晃氏と共同研究を行った.曲面上の写像がその群に含まれるための必要十分条件は,埋め込みに対するザイフェルト形式から定まる2次形式を保つことであることを初等的な方法により示し,さらに,この変形としては,pass moveと呼ばれる変形のみを用いれば十分であることを観察し,その変形でいくつのpass moveが必要か求める公式を得た. 3.ハンドル体の写像類群の一般ニールセン実現:向き付けられた閉曲面上の同相写像の群から写像類群への自然な全射の右逆写像が,種数が2以上の場合は存在しないことが知られている.3次元ハンドル体の写像類群について同様の問題を考え,種数6以上の場合に同様の現象が起こることを示し,さらに,ハンドル体上の擬アノソフ同相写像を多数構成した.
|