本年度の研究において4次元スピン多様体の特性類から同変K-群の局所化を使って不変量を定義し、古田氏による10/8-不等式を精密化する過程において現れる関係式を書き下した。この導入によってSeiberg-Witten方程式を使ってK-理論から得られる10/8-不等式の最善の評価式を定式化することができ、研究目標となる式を明確に理解することができた。しかし、同変K-群の積構造の計算は単純ではなく、定義において回避することが望ましい。その方向の結果として、1次元コホモロジー上の4重積からあるホモトピー不変量を定義し、既に古田氏との共同研究によって得られている10/8-不等式を改良したものをコホモロジー環から得られる不変量を使って評価することができた。更に4次元多様体のスピン構造を使えば、係数をZ/2Zで考えることによって2重積と3重積が定義され、それらも使うことによって不変量が得られることがわかった。 これからの研究として上述の2種類の不変量の問のギャップを埋めることが考えられるが、それはDirac作用素のK-理論的指数に関する性質をコホモロジー環の性質から導くことによって理解できると思われる。これまでの研究の中でそれに関する計算の一部を実行し、ある程度まで不変量の関係を調べているが、完全に理解するためにはK-群の更に精密な計算が必要であり、今後の課題として残されている。
|