研究概要 |
本研究課題の目的は大きく以下の(1),(2)に分けられていた。(1)4次元多様体上のアインシュタイン計量およびリッチフローの時間大域解の存在、非存在問題に対し、Seiberg-Witten方程式に付随する様々なゲージ理論的不変量を応用するアプローチを取る。特に、4次元多様体上にアインシュタイン計量もしくは、リッチフローの時間大域解が存在するとき、その4次元多様体に幾何学的にどのような制限がつくのかを、ゲージ理論的不変量を応用することで調べる。(2)Seiberg-Witten方程式に付随するゲージ理論的不変量の構成に関するホモトピー論的、代数幾何学的基礎付けに関して研究する。本年度は本研究課題の最終年度であり、研究の総括をすることも念頭において研究を行った。上記の(1)についてはこれまで着実な成果を得ることができた。特に本年度は当初の目的の1つであった、「反自己双対アインシュタイン計量を持つ4次元多様体のSeiberg-Witten不変量は消滅する」というルブラン予想に関して、第1ベッチ数と符合数に関するある条件の下、安定コホモトピー群の構造に関する結果を使用することにより、部分的な解ではあるが成果を得ることができた。さらに、リッチフローの非特異解を許容しない4次元多様体の具体例を新たに構成することができた。これは特にアインシュタイン計量を許容しない4次元多様体の新しい例を構成したことにもなっている。一方、4次元とは限らない一般次元のリッチフローに関する研究も行った。特に、リッチフローのある種の拡張版に付随する共役熱方程式の解に対し微分ハルナック不等式を証明した。(2)については文献の精読を行い、問題点を洗い出す作業に終始した。
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