研究概要 |
「同一のものが複数存在する」というのは論理的矛盾であるが,量子論特に場の理論はこの一見矛盾するものをとり込む事で或り立っている.これを数学論理の中に正しくとり入れて,点集合論にもとづかない,非す換代数を基礎にした微分幾何学の建設が目標である.これに向って,「代数表示の変形論」を展開し始めた.この中で局所的には区別できるが大域的には区別できない「多価の元」というのが一般的な存在の形であることが判明した.これらの元は数学的には.代数演算の結合律を破るので取扱いが難しいが,演算を注意深く行うことで,2次式の指数関数までは取扱えるようになった.この中に普通の計算では沢して現れることのない特殊な元が現れ,これだけをとり出すと,クリフォード代数を生成していることが判明した.この事は場の理論で言われている超対称性と良く似たものが数学の中にも自然に現われることを示している.この場合,使われる表示は,物理で一般に使われる正規順序表示とか,ワイル表示といったものでなく,一般的性質を代表している表示である.しかも,この現象は正規順序表示とか,ワイル表示では見ることのできないものである.これらの結果は本年度は富山,大垣,沼津等の研究会で発表しているが,論文としてまとめるにはもう少し物理学的意味が理解できてからにしたいと思っている.
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