本研究の目的は葉層構造と離散群作用についてその力学系的性質および幾何学的性質を様々な手法を用いて解明することにある。 本年度特に取り組んだものは3次元多様体上の流れの剛性である。閉じた向き付けられ3次元多様体Mの上にベクトル場Xで与えられた流れを考える。Xがパラメータ剛性を満たすとはM上のあらゆる滑らかな関数fに対し関数方程式f=X(g)+cが解を持つことをいう。ここにgはM上の滑らかな関数、cは定数である。定義から直ちに、パラメータ剛性を満たすベクトル場は、滑らかな体積を保存すること、また一意エルゴード的であることがわかる。ところがこれらの性質を満たす流れの中でもパラメータ剛性を持つものは極めて特殊であり、知られている例としては3-トーラス上の傾きがDiophantus条件をみたす線形な流れしかない。 本年度得られた重要な結果は上記の線形な流れ以外にはパラメータ剛性を満たすものは存在しないということを証明したことである。証明にはForni他によるホロサイクル流れの精密な研究およびTaubesによるWeinstein予想の解決という二つの大変に深い結果がつかわれる。この結果はContemporary Mathematicsに掲載されることになっている。 この他の研究としては離散群がカントール集合に作用するときの位相的な軌道剛性を調べたものがあげられる。この研究は今も継続中であり、まとまった段階で発表する予定である。
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