研究概要 |
本年度は,「周波数データを用いた鉄とコンクリートによる合成梁の欠陥同定問題に対する随伴数値解法の研究・開発」を中心に実施した. 「鉄とコンクリートによる合成梁の欠陥同定問題」とは,鉄とコンクリートによる合成梁の接合部欠陥同定問題のことであり,その問題は接合部における剛性係数同定問題へと帰着される.本研究では,未知の接合部剛性係数関数を周波数データを用いて同定し,それにより合成梁の接触部欠陥部分とその欠陥度合いを求める「非破壊検査手法開発」を目的としており,イタリア・ウディネ大学Antonino Morassi教授,北海道大学大学院中村玄教授,神保秀一教授との国際共同研究である.本年度において研究代表者は,新たな逆問題モデルに対する随伴数値解法の開発と,それを計算機上で実現する実装プログラム作成および数値実験実施を共同研究内において担当した.昨年度までの研究における周波数データとしては,「固有振動数」のみが与えられていることを仮定していた.しかし,精度の高い同定結果を得るには一定精度で測定された固有振動数データが多数必要であることが,本年度実施した数値実験により明らかになった.一方,一定精度で測定された固有振動数データを多数得ることは実用上ほぼ不可能である.そのため,測定データに「各梁の固有関数ベクトルの縦方向変位成分関数」を追加した逆問題モデルへと元の問題を修正した.その修正モデルに対し,それに適したTikhonov型汎関数を導出し,さらにその汎関数を用いた最小化問題に開発済み手法である射影勾配法を基礎とした反復解法を適用し,数値計算アルゴリズムを導出した.開発したアルゴリズムに対して様々な数値実験を実施し,その有効性を示した.またこれらの成果については,国内外の学会へ発表した.
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