研究概要 |
初年度は,形状最適化問題と密度型位相最適化問題の構成方法とその正則な数値解法を示すことを目標とした.最初に,抽象的勾配法は,あるヒルベルト空間上で強圧的な双1次形式を用意することで定義可能であることを示した.形状最適化問題は,リプシッツ連続な境界をもつ有界な領域の集合(L2位相でコンパクト性)を許容集合として,境界値問題の解で構成された評価汎関数による制約付最小化問題として構成できる.このとき,許容集合の中から初期領域を選び,リプシッツ連続な関数で構成した領域変動の集合を考え,その閉単位球を許容集合にした,評価汎関数が最も減少するような領域変動を求める問題を構成し,それらの解を用いたラグランジュ乗数法により制約を満たす領域変動を求め,それによる領域変動の繰り返しにより極小最適解に到達できることを示した.しかしながら,領域変動に対する形状微分を求めると,その勾配は本来必要な滑らかさを有していないことを示せた.適切なH1空間を選択した勾配法をガラーキン法で解くことで正則性は保てる.密度型位相最適化問題についても同様の論理が展開できた.著者らが力法とよんできた方法や密度型位相最適化問題のH1勾配法とよんできた方法は,いずれも,抽象的勾配法において適切なH1空間を選択したH1勾配法の族にまとめられることを示せた.その成果は「RIMS Workshop-数値解析における理論・手法・応用」などで発表し,数理解析研究所講究録へ投稿した. さらに,応用面では,音場構造連成系の形状最適化問題を応用した放射音圧最大化を目指した楽器の形状最適化問題,大変形接触する弾性体の接触応力を既定の分布に近づける問題,多体運動系の形状最適化問題に対して,それらの問題が可解であることを示し,プログラムを開発し,妥当な結果が得られることを示した.
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