研究概要 |
λがχ_2以上の基数のとき,λの可算部分集合全体の族の小さくない(定常な)任意の部分族Sに対し,λの大きさアレフ1の部分集合がとれて,Sの要素でこの集合に含まれるものの全体が再び定常となる,という主張を反映原理という.これはλの組合せ構造をχ1のそれに映す原理として無限組合せ論において重要な命題であるが,ZFCでの真偽の決定は事実上不可能であること知られている.代表者は,Aspero, Kruegerとの共同研究により,「λが正則または可算共終な特異基数の場合,反映原理を満たさない定常集合が稠密に存在する」という反映原理の強い否定が,強制公理の一種である固有強制法公理(PFA)と無矛盾であることを示した.この結果はPFAが反映原理の決定にほとんど影響を及ぼさないことを明らかにしたもので,PFAより強い強制公理であるマーティンの極大公理(MM)からは反映原理が導かれることと強い対照をなしている. 代表者は,半順序集合上の長さω_1+1のバナッハ・マズア型ゲームに対し,後手が,それまでの棋譜の下限ブール値と今何手目かの情報のみに依存した必勝法をもつ(戦術的閉(仮称))という概念を導入し,(1)の手法を拡張して,PFAが戦術的閉な半順序集合による強制法でつねに保たれることを示した.この結果は,PFAが戦略的閉(後手が棋譜の全情報に依存した必勝法をもつ)な半順序集合による強制法では必ずしも保たれないことや,MMやその別の亜種などは戦術的閉な半順序集合でも保たれないことと好対照をなしており,強制公理と半順序集合の性質の階層構造の対応関係をより明らかにした. さらに,戦術的閉な半順序集合による強制法で強制できる組合せ論的命題の例としてCP(仮称)という命題を導入し,CPが戦術的閉な半順序集合が長さω_2の意味でも戦術的閉となることと同値であることを示した.
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