研究概要 |
(1)半順序集合が,その上での長さω_1+1のバナッハ・マズア型ゲームにおいて後手がそれまでの棋譜の下限ブール値のみに依存した必勝法をもつとき戦術的閉,その情報に加えて今何手目かという情報にも依存した必勝法をもつとき作戦的閉と呼ぶ(邦語の用語は未確定のため仮称).これらの性質をもつ半順序集合による強制法では,連続体仮説のいわば非常に強い否定の自然な形の公理である強制公理の一種である固有強制公理(PFA)が必ず保たれることが従前の研究で明らかになっており,通常の戦略的閉の概念と好対照をなす重要な概念であるが,戦術的閉と作戦的閉の概念の差異については十分明らかになっていなかった.代表者は作戦的閉だが戦術的閉でない半順序集合は常に存在し,CPと仮称する無限組み合わせ論的命題を強制する自然な半順序集合がこの例となるものと予想していたが,今年度の研究で,CPが成立する場合にはこの半順序集合は戦術的閉となることが明らかになった.この発見により,CPが成立する場合にはこれら二つの概念の差異はより微妙なものとなる可能性が生じ,PFAと無矛盾な命題の多様性について新たな知見が得られたといえる. (2)位相空間のコンパクト化にまつわる基数不変量に関連して,代表者は,連携研究者の嘉田勝との共同研究により,非孤立点の全体がコンパクトでないような可分距離化可能空間Xについては,Xの互いに交わらない閉集合の対の全体とX上の距離の全体との間に「距離1以上で引き離される」という関係を考えたとき,これとGalois-Tukeyの意味で同型となる自然な順序構造を発見した.これは,Xのストーン・チェックコンパクト化を生成するのに必要なスミルノフコンパクト化の最小個数sa(X)の値を与える等式に対するより構造的な説明を与えるものである.
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