散逸結合系で現れる動的パターンを分岐構造から理解するのが本研究課題の主題である。昨年度、細胞極性の出現に関するモデルの定常解の分岐を調べるうちに非一様定常解からのホップ分岐を詳細に調べる必要が生じた。非一様定常解からの分岐は、非一様定常解のまわりの線形化固有値問題が単純ではないので一般には難しいが、3重退化分岐としてより一般的に捉えられることがわかってきた。このような退化分岐の新しい可能性として3変数の反応拡散系を提案した。ある種の3変数の反応拡散系では、一般に0-1-2モードの退化分岐点が発生しうるが、そこでの標準形を解析することにより非一様定常解のまわりの振動分岐が理解できることを示した。またそのまわりにカオス的な解が存在することも明らかにした。これらの結果は気象大学校の奥田孝志氏と以下の論文にまとめて現在投稿中である。 Oscillatory dynamics in a reaction-diffusion system in the presence of 0:1:2 resonance また昨年度までの球面上でのウェーブ分岐による振動パターンの研究により低次のモードに現れる基本的な解構造として回転波と定在波が得られた。これらの制御を生理化学の振動現象と照合するべく、ガラスビーズ表面でBZ反応の振動パターンを生成する準備を行った。ビーズ表面上に化学反応を限定することが予想外に難しく、実験設定が整ったに留まり実際の制御は今後の課題である。
|