研究概要 |
研究実施計画の役割分担に従って,下記の研究成果を得た. 1. 固体物理の実際の準結晶構造において回転対称性をもつものが特に重要であると考えられている. 7回回転対称性をもつDanzerタイリングの局所配置を詳細に調べることにより,7回回転対称性をもつDanzerタイリングはタイリングの列の極限状態としては得られないことを示した.これは5回回転対称性をもつPenroseタイリングとは異なる性質である.さらに,不純物のように捉えられる特異な局所配置を唯一箇所にだけ,Danzerタイリングは持ち得ることが判明した. 2. Substitution Ruleによりタイリングを構成する定式化には2つがあるが,そのうちのひとつはあまり調べられていない。詳細を調べることにより,射影法により構成される1次元の準周期タイリングの場合と同様にタイリングの族が有界領域によりパラメータ付けされてさらにその有界領域に自己相似性のような構造を与えることが分かった.この構造は既知の力学系と関係することが期待される. 3. 分子の立体構造を調べるために,n個の環状炭化水素分子の数理モデルを与え,その配置空間のトポロジーを研究した.N=5,6,7の場合には多様体の構造をもち,その微分同相型も決定される.N=8の場合にはn=5,6,7の場合とは状況が異なる2つの配置をもつことが判明した. 4. アメキメデスタイリングに現れる局所配置を用いて,環状拡大という構成法により6回回転対称性をもつ非周期タイリングを構成した.さらにこの手法を応用して6回回転対称性をもつ非周期タイリングの同型類を非可算無限個,構成できるのではないかと考えられる.
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