研究概要 |
Ertlのグループにより提唱された、金属表面上での白金触媒化学反応を記述したモデル方程式である2変数反応拡散移流方程式を用いて、パターン形成のメカニズムと移流効果の関係を解明することが研究の目的である。数値実験により、空間2次元矩形領域でストライプ、ヘキサゴナルなど対称性のある定常及び非定常パターンの存在をすでに示した(Takei,Tsujikawa and Yagi,(2005))。この事実を踏まえて、定常パターンについての理論的な解析結果を得た。 2次元有界領域が十分滑らかな境界をもつとき、ノイマン境界条件のもと金属表面の状態を記述する方程式の拡散係数について 1)拡散係数が臨界値より大きい場合、最大値原理を用いて拡散係数に関する解の一様有界性を示すことで、定数解を除いて正値定常解が存在しないことを証明した。 2)1)で示した臨界値より拡散係数が小さい場合、Leray-Schauderの写像度理論により空間非一様な定常解が存在することを示した。空間次元が1の場合、この結果は定数解の不安定化によりそこからの分岐現象と解釈することができる。 これらより、拡散係数をパラメータとした場合の正値定常解の大域的構造が部分的にではあるが解明された。一方、金属表面上の気体分子の吸着密度の時間変化を記述する方程式の拡散と移流係数が共に大きい場合、ある種の極限方程式を導入し、中間値の定理を用いて大域的な解構造を明らかにすることにより、反応拡散方程式の空間非一様な定常解の存在を示した。また、AUTOにより数値的に空間非一様な定常解から2次分岐により別の定常解の存在も示した。以上の結果を国際研究集会で発表した。
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