研究概要 |
本年度は,当初予定の通り,Levy kernelと呼ばれる飛躍核より定義される二次形式について,それに対応する(対称な)飛躍型マルコフ過程を構成することに成功した.また,その二次形式に対応する生成作用素として非局所型作用素である,二階の微分積分作用素が現れることを示し,更には生成作用素の具体的表示を用いて,対応する飛躍型の確率過程の球からの脱出時間の平均を評価することに成功した.あわせて,確率過程の保存性も示すことに成功した.これは,推移確率の空間変数に対する滑らかさを導出する際の基本的道具である.また,与えられた二階の微分積分作用素がフェラー過程を生成するときに,適当な摂動の元でも,フェラー性が保存されるという結果も得た.これは,従来Dirichlet形式論を通じて確率過程を構成する際に生じる,出発点に関する多義性の問題点を解決するための一つの手法として注目されるものである 一方,マルコフ過程の離散近似として知られるマルコフ連鎖の収束について,conductanceと呼ばれる,マルコフ連鎖に対する推移確率の列を考え,その適当なscaling極限を考えときにその収束先として現れる極限過程として,従来は連続過程が現れる場合の研究が主であったが,今回はジャンプ拡散過程と呼ばれる,飛躍部分を持つ拡散過程が現れ得ることを示した
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