研究概要 |
本年度はパンデミック新型インフルエンザの流行防御対策の策定支援を目的とするシミュレーションを行った.2009年5月の神戸,大阪のパンデミック新型インフルエンザの流行はsocial distancing,特に,地域全体で一斉に実施した学校閉鎖によって封じ込めることができた.しかしながら,social distancingの地域社会への負担は大きなものであることも明らかになった.想定される第2波に対して対策を大規模に実施するためには対策の有効性を明らかにすることが必要であった.2009年春の神戸,大阪の流行は高校生を中心に流行した.2009年の夏休みにキャンプなどで一般社会との接触が少なくなった学童間で集団発生したケースをもとに学校における学童間の流行伝播係数を推定した.この流行伝播係数を用いて地域社会の流行伝播シミュレーションを実施した.シミュレーションは東京郊外をモデル化した仮想中央線モデルというバーチャルコミュニティのモデルを用いて実施した.仮想中央線モデルの流行伝播はindividual based Monte Carlo法によって計算される.シミュレーションによって,学校閉鎖,自宅待機,抗ウィルス薬の予防投与,学童へのワクチン集団接種の効果を評価した.シミュレーションによる対策の効果の比較は2009年11月にEurosurveillanceで発表した. また,研究のもうひとつの狙いである抽象的なメタファーモデルに関しては,メタファーモデルの基礎となるtwo-phase shallow water equationsに感染症のSIRモデルを組み込んだ計算および長時間の計算のための基礎的な研究を行った.
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