研究概要 |
ウィルスの感染伝播を表す病理モデルにおいて,時間項に定数遅れを含む微分方程式が多く用いられており,その定性的性質についての解析がなされている.特に昨今の鳥や新型のインフルエンザの大流行という現実的な状況に伴い,国内外で研究が盛んである.2010年には2年おきの日中生物数学コロキウムが開催されたため,参加して研究交流を図るとともに,離散化の工夫によって得られる差分方程式の形式解に関する内容でポスター発表を行った.このコロキウムにおけるProceedingsの論文を投稿中である. これらの定性的性質に関する研究は従来,連続型モデルに対するものがほとんどであり,離散型モデルに関してはあまり与えられていない.しかし,従来の離散化とは異なる工夫を行えば,連続型モデルに対して用いられている大域安定性の条件を示す手順とほぼ同様に,離散型モデルの安定性を導けることが元大学院生との共同研究によって解明されている.これは数少ない離散型モデルの成果として重要な意味を持つ.基本となるアイデアはJ.Math.Anal.Appl.に論文を投稿し,年度内に早々に掲載された.この考えはワクチン投与を考慮したモデルにも適用できる.その結果はJ.Comput.Appl.Math.に投稿し,査読結果を受けて,修正版を既に提出している.一方,数理生物モデルに起因する可積分な離散ハングリーLotka-Volterra系と固有値計算の共同研究もさらに進めた.今まで未解明だった,他の離散ハングリー系との相関関係について,行列の相似変換から導き出した論文がPhys.Letter A.に掲載されている.
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