本研究課題の目的は工学の分野に登場する各種微分方程式、差分方程式の境界値問のグリーン関数を具体的に求めて、グリーン関数の再生核構造を調べることで対応するソボレフ不等式の最良定数を求めることである。平成21年度に得られた主要な結果は以下の通りである。 1.パラメータ付き2M階線形差分作用素に関する適切な境界値問題を設定し、そのグリーン行列を求めた。次に対応する離散ソボレフ不等式を導出した。また不等式の最良定数の行列式表示および固有関数展開による表示を求めた。本研究結果は一編の論文としてJournal of Physics A : Mathematical and Generalに掲載された。 2.フルビッツ型2M階線形微分作用素に関連して登場する境界値問題のグリーン関数を求めた。次に対応するソボレフ不等式の最良定数を求めた。最良定数は表現論に登場するギャンベリの公式を用いて、シューア多項式の比の形で表せることを明らかにした。本研究結果は一編の論文としてScienicae Mathematicae Japonicaeに掲載された。 3.これまで得られた結果を多変数化、つまり偏微分作用素に拡張した。具体的には重調和作用素の球内部境界値問題のグリーン関数を球面調和関数展開によって求めた。次にグリーン関数の対角線上での最大値を計算することによって、対応するソボレフ不等式の最良定数を具体的に求めることに成功した。本研究結果は日本数学会秋季分科会函数解析分科会(9月下旬大阪大学)にて口頭発表した。
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